自爆霊穂“無実ちゃんと十一人の未来罪人

長編ちっくなweb小説の形をした何か。原則毎週水or木曜日更新。

【北園紅蘭 残玉:2 門開通迄残刻:51分】

風満帆。


その瞬間までは概ねそんな四字熟語の通り、うまくいっていたのだろう。


負ければ即爆死のデスゲームにおいて、彼こと北園紅蘭は戦略上わざと命を落とした後に息を吹き返すという荒業をやってのけたが、事実上の決勝戦においても、未だ生きている。


彼のみならずパートナーの東胴回理子しかり、過去に敵対していたが再び同盟関係を結んだ高低ふるるしかり、三者三者とも生きている。


沙羅や士の様に白兵戦に長けた肉体を持ち合わせていないにもかかわらず、紅蘭は自らの所有物である団体からの援軍及び軍事用試作品を以てして、人外たる追跡者――塁砕刃を一度は撃退し、再起不能に追い込んだ。



すわ、そ う 思 い 込 ん で い た。



ここで彼の迂闊を責めるのには些か見解が分かれるポイントなのかもしれない。


全身に重火器による一斉射撃を受け、暫くの時間をおいて再び立ち上がるタフさを兼ねそろえているとはいえ、身体を三分割にし、且つ頭部を氷結させコナゴナに砕いた。


トドメを刺して、終わらせたつもりであった。



普通ならば死んでいる。


通常ならば死んでいる。



だとしても、あにはからんや塁は人間では無く理外の存在――他ならぬ魔族である。


彼の故郷である地界。


全般の生物が誕生してから72時間以内に8割以上がその生涯を終えるという劣悪な環境であるのだが、彼はしかし生存競争に勝ち残り生き残り何世紀もの間存命し続けている、魔族であったのだ。


そんな“殺害不能-ノスフェラトゥ-”で通っていた塁は、紅蘭らが別地点へ移動しその場を離れた際、当たり前のように生き返り、当たり前のように残る兵士達を一人残らず惨殺した。


敵対する対象らを殲滅した後、当然の様に紅蘭らへと追いつき、今度は前口上を抜きにした不意打ちにて。



後方より補足した大罪人2名の背中を刺し貫くべく、両腕を押し出したのだった。


―|―|―|―|―|―|―|―|―|―|―|―|―|―|―|―|―|―|―

「ッ!?……くっ、かはっ……」


大きな何かが、肩甲骨の辺りにぶつかったような感覚がした。


倒れながら回理子は下唇を噛み、惑う。


(そんな。これって、まさか――)


認識した後に襲い来る急激な痛みに、未だ終わってない――否、再び始まるであろう惨劇に、眩暈がしそうになる。


ゲーム当初、彼女はどうせ自分なんて犬死によろしく早々に敗退するのだろうと半ば諦めていた節があった。


だのに、幸か不幸か幾度も窮地を乗り越え、ついにはこの理不尽な死の連鎖から逃れられると思っていた。


助かると思っていた分、初めから諦めているよりも落胆は大きく、精神的負担もひとしおにならざるを得ない。



が、同じく背後より強襲を受けたパートナー――紅蘭といえば、回理子とは相反する行動を既に取っていた。



塁からの攻撃を受けるより少しだけ早く、彼は勢いよく前へと倒れ込んでいたのだ。


慣れない戦闘行為を行ったからか、あるいは未だ意識が戻らないふるるをおぶっての行軍に疲労を感じたからか、ともかく紅蘭は石も木の根もなにも存在しないその場で躓き、転んだのである。


地面に両手を付いた時、ワンテンポ遅れて塁の拳が頭上を霞め、攻撃を受けたと把握した紅蘭は即座に体勢を整え、一目散に駆け出した。


回理子は一瞬、自分は見捨てられたのかと邪推するも、はたとしてそれが誤りである事に気が付く。


塁から距離を取り、おぶさったふるるを手ごろな樹の幹へと預け、振りかえり、物干し竿のような太刀を斜めに構え、紅蘭は居直っていた。


「つくづくしぶといな貴様は」


「さっきも言ったろう? 俺様に死なんて概念はねぇんだよ」


相対する追跡者の頭部は、液体窒素で急速冷却・凍結した後に砕いた筈なのに、一見して元通りになっている。


しかしながらその描写を微に入り細を穿った説明をしたならば、塁の顔面――額に生やした一本の角が、消失していた。


代わりと言わんばかりに、塁の両拳の第三関節辺りには酷く鋭利な尖形状の物体が十本、皮膚を突き破って飛び出している。


「おにいちゃんのその刀、なんか厄介ぽいからよぉ。デコんトコの鬼骸をちぃっとばかり削って、拳にあてがってみたんだわ」


「地界にもなぁ。熱や火を使う奴らはいてやりあった事はあるんだけどよぉ、なーんか違うんだよなぁ」


「腕を切断された時に感じた熱さと、微妙になんだか違う気がするんだけどよぉ~。難しい事は分かんねぇし、いっとう固い部分なら、そう簡単に切られないだろうぜ」


カチカチと威嚇させるような音を立て、肩を回しながら塁は喉を鳴らした。


それを受けて紅蘭は、やれやれと肩を竦(すく)める。


「セオリーに準じて頭さえ潰せば問題ないという判断だったが――貴様の場合はそれも当てはまらぬ……と。出鱈目過ぎるな、笑けてくるぞはっはっは」


哄笑する彼のその様を見、塁はとうとう観念したかコイツと思った口元をほころばせたが、その傍らでうずくまる回理子は別の可能性を見出していた。


重火器による一斉射撃も、身体を刃物で切断しようとも、頭部を凍らせて砕こうとも、それでも斃れぬ追跡者に対して。



彼は対応策を更に隠し持っているのではないか、という可能性を。



(でも、なんだろう。物凄く嫌な予感がする……)


事実、ものの数分後には回理子の不安は的中することとなる。


さておき間を置かずして、紅蘭と塁との戦闘は再開された。


脚部の機構にて高速で移動をしつつ塁へと斬撃を放つ紅蘭は、相も変わらず信じられないぐらいに無駄のない動きであったのだが、一方でどこか時間稼ぎをしているようにも見えた。


決定打に欠く、何らかの切っ掛けを待っているような。


「“炎刃全解”のフル稼働でも傷すらつかぬとは……流石に頭が痛くなってきたぞ」


「だーからいっとう固いっつっただろう? 銃だろうが剣だろうが効かねぇんだよ!」


見事な太刀捌きを、しかし両腕で殆ど弾き返す塁。



運動神経の鈍い彼が地界出身の魔族と同等以上に鎬を削れているのは、前提として塁が多少なりとも手加減――つまりは全力を出していないからとはいえ、彼のお抱えの独立行政法人の開発部からの試作品の効果に起因している。


流派・型を問わずして、国内外は勿論の事、文献から紐解いた過去の剣豪までをも範疇とする、いわゆる“武芸の達人”総計200名余りの、戦闘データを紅蘭はリアルタイムで再現することが可能であった。


戦闘データ自体は紅蘭の脳内に格納されていないとはいえ、置かれた状況や環境を数値化し1秒に満たない時間にてそれをデータ送信、感覚的には送信とほぼ同時に最適解に違わないレスポンスデータを受信し、全身に埋め込んだ電極と連動することによって、まるで格闘ゲームの様に身体が勝手に動くシステムを紅蘭は有しており、実際今の彼はそれを遺憾なく発揮していた。



仮想戦術身体操作。


開発及びメンテナンスにたず携わるエンジニア達曰く、


“F2P-フィジタルファイティンフェノメノン-”と呼ばれるクラウド型機構によって、紅蘭は辛うじて命を繋いでいたのである。



加えて彼が振るう長物“炎刃全解”――型番はXepher-00の存在も、追跡者と渡り合うにあたって大きな要素を含んでいた。



鎧匠で名の通った刑部家第三代目当主である刑部楼狐庫(おさかべろここ)によって誂(あつら)えられたそれは、形だけを取れば日本刀をベースとした一振りであった。


日本刀。かの戦国時代において武士階級の者達が帯刀していたそれなのだが、しかし“炎刃全解”において少々趣が異なっている。


切れ味云々よりも重要視され、念頭に置かれていたのは、壊れ難さに特化した形体及び形状である。


刃物全般の特性として石や金属といった固い物質にぶつかった際、刃こぼれで済めばともかくとして、最悪の場合刀身が破損する場合も往々にしてあり得る。


専ら日本刀自体、それを逆手に取った“折れにくい”刀であるのだが、氏刑部が作り上げた“炎刃全解”は業物を遥かに凌駕する強度と耐久性を備えていた。


更に独立行政法人GalopBrasterS開発室の技術の融合・合致により、“太刀の形をした電動鋸”へと変貌を遂げて。


柄付近にあるボタンを押す事で、刀身全体が超高速で振動――鋭利さが格段に増し、発する熱量は僅かな時間にて摂氏四千度強にまで登る。


攻撃を受ける度にその身を短期間で進化させていく塁が新たに生やした十本の爪に弾かれてはいるものの、振動する周波数をMAXに引き上げれば、部位破壊の目は残されているのかもしれない。



しかし今の紅蘭はそれを良しとしなかった。



拳圧に脅かされながらも振るい続ける剣戟の応酬の渦中においてーー別の狙いがあったのだから。



そして暫く撃ち合う中でようやくその兆候が表れはじめた。


兆候――あるいは前兆。



ぽつりぽつり、と。


折り入って降りしきる雨が、肌を濡らし始める。



「――はたた神“陰鬼”を撃ちて余すなし――」


「あん? なんだそりゃ??」


紅蘭が呟いた内容が意味不明だったのか、塁はひとまず迎撃の手を緩め、尋ねた。


「近しく訪れるであろう未来を指し示す俳句をな、ぼやいただけであるよ」


「はいく? そんな生物は知らねぇなぁ。うまいのかそれ??」


(ん。相生垣瓜人の微茫集だったっけ、確か収録されてたの)


非常事態にも関わらず、回理子はうろ覚えながらに思い出そうと頭をひねった。


この場合、五七五の計17文字に込められた作者の意図は問題では無いように、どうしてか感じられる。


「うまいかまずいかで言うなれば、あるいはこうも言い換えられるであろうな――エクレア、とも。時に貴様、甘物は好きか?」


「肉程じゃねぇがなぁ。菓子類は嫌いじゃねぇぜ!」


殺し合いを忘れて食欲に思いを馳せる塁とは対照的に、回理子の顔色は見る見るうちに血の気を失っていた。


(え…………ちょっと待って。エクレアって……それにさっきの俳句……まさか………)


普通ならば、一般的な人間であれば、エクレアという単語からは外国産スイーツを連想するだろう。


しかし、こと回理子に至っては違った。



エクレア。


もしも単語の意味ではなく、



語 源 を 指 し 示 し て い る の な ら ば 。



現在回理子らは、樹々も疎(まば)らな比較的拓けた場所にて足止めを喰らっている。


もはやざざ降りになりつつある空模様は、今や顔を上げれば視界一杯に広がりつつあって。


否が応でも符合してしまう、紅蘭が何をしようとしているのか。


考えたくないのに考えてしまう、とめどない思考の加速。


(いや、いやいやいや北園さん、まさか……まさかだよね……?)


間際に訪れるであろう予感は、もはや確信に相違ない決定事項の様に感じられた。


狙って出来る事ではないが、もはや単純な運の良さを通り越した、事象を操作しているとしか考えられない現象の予兆。


まごつく回理子を尻目に、酷く高圧的な表情を浮かべながら、紅蘭は己が得物を鞘へとおさめ、すぅっと天を指して、宣言した。



「順序は逆だがデザートだ。貴様の満腹中枢神経を跡形も残さず粉微塵にしてやろう」



掲げた腕を指揮棒の様に振り下ろした刹那、



目も空けられない程の光と、轟音が周囲を包み込んだ。


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雷樹、という気象現象がある。


通常雷とは、宙にある雲から下に向かって稲妻が光って落ちるものであるが、雷樹とは逆に地上から空に向かって昇っていくように光り鳴る雷の現象を指す。


観測者たり得た現存する大罪人の内の一人である冥奈も、思わず足を止めて感嘆する程には、それは凄まじい光景であった。



(空から大きな樹が生えている……)



ある特定の地域にて特定の条件に於いてのみ発生する、いわば極めて稀な雷中の雷、信じられない速度で落ち続ける電撃の一点集中。


落下地点に点在していた大罪人及び追跡者は、時間にしてたった2~3分間の間に、100発近い雷をその身に受けたのであった。


塁と、回理子と、ふるるとが、敵味方問わず満遍なく稲妻に穿たれる中、只一人直撃を免れる者を除いて。



「北園流秘儀“宴狂ノ神鳴-ボトルダンサー-”とでも言った所か」


「数多の万雷だろうとも、我には当たる道理等…………無いっ! くくっ、ふははははははっ!!!」



動き回りながら落雷を回避し続け、高揚した気持ちを抑えられず紅蘭は叫ぶように笑っていた。


宝籤の一等を三日連続する程の業運の持ち主だからこそ出来る芸当と結果であるのだが。


げに恐ろしきは、大罪ランク序列9位北園紅蘭、



彼 は 未 だ 己 の 固 有 能 力 を 使 っ て す ら い な か っ た 。


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荒ぶる自然の暴威を輻輳(ふくそう)したかのような局地的な落雷及び豪雨は、暫くして収まった。


主に目と口からシュウシュウと湯気を吐き出している回理子とふるるは勿論の事、追跡者たる塁すらも地に伏せて一ぴくりとも動かない。


結果から言うと、被雷した三名の中で最もダメージが大きかったのは塁であった。


銃弾を喰らっても弾き返す性質に進化した肉体は、一斉射撃を受ける前の身体に比べ高質化を手に入れた分、代償として金属成分を過分に含有しており、電流の伝導率は桁違いに跳ね上がっていたが故に相乗効果を生むに至った。


対する回理子とふるるは負傷こそしていたものの、二の足で立つ塁と比べれば身体は低い位置にあり、他との接触面が多い分だけ電気が分散して流れた為に、ちょうど一回分死ぬ程度には留まっていた。


ピンチはチャンスへと逆転し、今度こそ決着が着いたかのように思える現状の中、しかし紅蘭はというと構えを解かないまま見下ろすようにして、塁の二又に減った尾の部分を凝視していた。


ほどなくすると、その片側に変化が起こる。


歪な形状の肉人形が、塁の尻尾の皮膚を突き破り、か細い声で歌を紡ぎ――



『くぅーるり、くるぅり、りり……「黙れ聞き苦しい」ッ……!? グェエェェエエエエエエェッッ!!!!!!!』



――終える前に、ないしは歌の途中に、紅蘭は“炎刃全解”を突き立て、力任せにそのまま骨の傘ごと肉人形を切り払った。



勝って兜の緒を締めよ、同じ轍を踏まずには、些細な油断こそ捨て去るべし。


再生の引き金と思しき塁の付属部分を撫で斬りにし終わった時点においても、紅蘭は己の勝利が確実で無いことを己に言い聞かせるようにして、作業の続きを行おうとする。


(魔族。規格外の存在。きっとこれでも未だ、足りない)


撃墜玉の破壊、それをせずには終わらないのだと、彼は考えていた。


だからこそ塁の身体を検分(解体)し、この手で玉を見つけ出し、破壊する必要に駆られていた。


今度こそ油断は無かった、周囲に注意を怠ることなく、事にあたっているつもりだった。


しかし――、



「!? ……ァアアァアアアアアアアアアアアアァッッッッ!!!!」



内 側 か ら 己 の 身 体 を 突 き 破 ら れ る 攻 撃 方 法 を、流石の紅蘭も予想はし得なかったのだった。



「蛇腹婆々に次いで、輪廻坊主まで殺られちまうとは……」


質量保存の法則を度外視するが如く、浅黒い肌色の逞しい腕が、筋骨隆々な体躯が、ずるりと紅蘭の胴体から零れ落ちるようにして飛び出す。



「痺れたぜぇおにいちゃんよ。でもまぁ、ここが終点だ」



腹部を抑えて悶絶する紅蘭へと、もう一体の塁は大きく振り上げた拳骨を頭部へと叩き込んだ。


「……カぷッ?!」


その一撃は、彼の眉毛から上の辺りを大きく損壊せしめた。


「もっともっと遊びたい気持ちはあるにしてもだ。残念ながら俺様はどうにも腹が減った、お開きってことで」


言って塁は馬乗りの体勢で、拳を何度も同じ個所へと振り下ろす。


ぐちゃりっ、ぐちゃりっ。


耳障りな音が辺りに響く。


頭蓋骨が陥没し、脳味噌が血と骨と肉でシェイクし、明らかに絶命しているのにも関わらず、塁はその行為を繰り返していた。


致死を無かったことにする反魂玉の効能を以てしても、 ノ ー タ イ ム で 死 に 続 け る に至っては、その限りでは無いことを、塁は本能的に察したが為の行動であった。


落雷のダメージによって生の許容量が超過し、自身の反魂玉が一つ割れて回理子が復帰する頃には、塁の懸命な努力の賜物により、紅蘭が持つ反魂玉は既に一つも無い状態にまで追い詰めれていて。


「んっ――――――はッ!? ちょっ、北園さんッ!」


何の策も持たず、ただこれ以上は不味いと思ったな否や、回理子は塁を紅蘭から引き剥がしにかかろうと、駆け出していた。



実際、この行動が無ければ彼女らは三人残らず全滅していたに違いない。



ドラムを叩くように紅蘭を殴打する塁が、意地悪そうな表情のまま振り返り様に爪を突き立てたことによって回理子の反魂玉は2つから1つへと減算してしまったとはいえ。


一瞬だけ紅蘭から別の存在へ、注意が逸れた。


僅かなその隙を、彼が見逃す筈も無くて。


左腕に装着した盾のキー部分へ、ブラインドタッチにてコマンドを打ち込み、上に乗っかった塁の脹脛(ふくらはぎ)の部分へ押しやり――爆破の衝撃と共に彼は追跡者との距離を開けた。



ドンッ!



「のわっ!? なんか股の辺りが熱ィ!!!」


多少の発火が巻き起こったとはいえ、ぱたぱたと手で叩くことにより、塁はほぼ無傷。


対する紅蘭は、拘束された状況を抜け出す代わりに――肩から先の左腕を失っていた。



「参ったな……どうにも」



残された反魂玉は0個。


ペナルティにより失われたのは、視覚・嗅覚・聴覚の三感。


五感を補う特殊バイザーも、先の集中落雷の所為で機能不全。


飛び道具を防ぐ為の半自動迎撃盾も自爆コマンドによって爆発。


そして極め付きが、左腕の消失による出血多量による死が目前に迫っているという、未来。



「スマートじゃないが……しかし、難易度的にはこれぐらいでなければつまらぬ……」



絶体絶命の窮地においても、彼は不遜な笑みを浮かべていた。


「腕ぇ、治らねぇってことはもう玉切れだろ。強がってんじゃねぇよ、さっさと死ね」


何度も拳を打ち付けた紅蘭の頭部へ、もはや警戒も抱かず緩慢な動きで突き出された拳。



だがその拳は、 二 度 と 握 れ な い 状 態 に 陥 っ た 。



「もはや我が死は確定した…………が、貴様は虎の尾を踏んだのだ」



“それ”をびゅんびゅんと振り回す紅蘭の背後には、いつの間にか金色の砂時計が浮かび上がっている。



「覚死の心得。固有能力【ハラキリマグナム】の真髄を――無と共に抱き散るがよい」