自爆霊穂“無実ちゃんと十一人の未来罪人

長編ちっくなweb小説の形をした何か。原則毎週水or木曜日更新。

【西乃沙羅 残玉:1 門開通迄残刻:19分】

げやりな気持ち……というものが果たして自分にあるのかどうか問いただしたところで、結局の所は大罪人である士との一騎打ちを受けた結果の産物に対する、鑑みる必要もない只の事実から来る悔恨の念でしかないのだろう。


皇はそう思った。


吹き飛んだ箇所を修復するだけの力を溜め込むしか出来ない己の無様さを憂いながら、皇はそう思っていた。


(いみじくもここまでやってのけるとは……下等生物の癖に、中々やるじゃあありませんか)


固有能力に秘伝の奥義をも掛け合わせた士との衝突は、無事か無事でないかという点において、ほんの一歩だけ皇が勝っていた。


とはいえ、代償として本来の肉体の7割をも失い、自由に動く事すら儘ならない訳なのだが。


髪の毛一本に至るまでを爆弾と化して、その全てを攻撃に転化した士はというと、皇の視界の左側にてうつ伏せに突っ伏したまま、ピクリとも動かない。


精魂尽きたののか不自然な程に真っ白に皮膚は色変わりしており、今や起爆霊である真韻も傍にはいなかった。


身動きの取れない皇は士の生死を確認する術は持ち合わせていない(今は治癒に重きを置いているので極力無駄な事はしたくない)とはいえ、ひょっとして生きているのではという疑念がない訳ではないのだけれども、幸い危機察知センサーは反応する気配は無かったし、不意に脅威が訪れたとしてもあと1~2回は対処できる術は持っている。


心残りというか、これは架せられた使命というか任務というかを不完全に終えてしまう可能性が非常に高い点においてのみ、皇は嘆かずにはいられなかった。


完全なる復元は元より諦めていたし、せめて手足と――よしんば最悪飛行を行える程度の翼の修復のみを最優先にしたとしても、短く見積もってあと10分近くは時間を有するだろう。


(門が開通する時間を差し引いても10分以下……果たして生存している罪人どもの残りを僅かな時間で駆逐するには――ん?)


皮算用ならぬ大まかなスケジュール建てをしていた皇だったが、ここで一旦思考を中断される。



「よぅ色男。久し振りだねぇ」



颯爽と現れたと表現するには程遠い――片足を引きずるようにして燃え残った樹の陰から登場したのは。



「さっきは一本取られちまったが。お互いボロボロみたいだし二戦目、闘(や)ろっか」



大罪ランク第2位、恋愛依存症


西乃沙羅、その人だった。


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生きていたのかという驚きよりも、何故そうも簡単に姿を現したのかという懐疑的な気持ちが皇には湧いてきていた。


遠目に見ても沙羅が万全――どころか、立っているのもやっとなコンディションにも関わらず、何故こいつはわざわざ声を掛けた?


「あれまぁ……爺もやられちゃったか。ちょっとばかし爽やかな気分にはなるんだろうけど、元弟子的には複雑な感じもするねぇ」


軽口を叩きつつ、沙羅はにじり寄るような歩調で皇へと向かってきている。


(よもや無策ではあるまいが……というよりも、一体どういうつもりだ)


自信が負傷しながらも、仮に反魂玉で生き返ったとはいえ、沙羅は既に皇の光線によって命を落としている。


彼女が持ちうる武力をもってしても、白兵戦において一度も決定打を入れられなかった相手――ましてや今ならば士との戦闘によって甚大なダメージを負っているというのに、何故不意打ちでは無く自らの存在を明るみに出すような行為に出たのか?


相変わらず危機察知センサーは働いていない。故に眼前の人間に脅威は感じられない。


それでも。如何様にも反応しない己の特性と比類しても、とかく皇にとって死に体の沙羅は、絵も言われる不気味さを感じずにはいられなかった。


(あるいは放っておいてもそのうち死ぬのだから、せめてもと玉砕覚悟の特攻……とかか?)


だとすれば、その認識は大きく間違っている。


むしろその仮定が正しいのならば、皇にとっては大いに喜ばしい話だ。


なぜなら現在、皇はその場から飛ぶことも動くことも出来ない重体とはいえ、攻撃手法までもが封じられている訳ではないのだから。


八つの巨翼は二つにまで減っていたし、二十の掌はもはや一つも無く、光線を最も射出しやすい両の腕は肩から丸ごと消失しているとはいえ、


たかだか人間一人を屠る程度の力ならば、出し惜しみをするまでも無いと。


皇はそう思いながらも、しかし別方向からのアプローチにも気を配っていた。


「あからさますぎるぐらいに疲弊していて、それが振りなのかどうかは置いておいても、疑似餌(デコイ)の真似事ならするだけ無駄だと言っておきましょうか」


はたと、沙羅の足が止まった。


「二度目の説明になりますけれど、どうせ物分かりの悪い猿の末裔なのだから、繰り返し今度はしっかりと説明しておきますね」


「私は自らに向かってくるあらゆる脅威を事前に察知・対処出来る能力、もとい感覚を持っています」


「あなたがどれだけ弱っている演技をしようとも、それに騙されて引き付けられている最中、間隙を縫っての不意打ちは私には通じない」


「……へぇ、そうかい」



これは皇が沙羅へと鎌をかけたに過ぎないが、しかし的中したのか、あるいは中らずと雖も遠からずだったのか、ともかく彼女の歩みを止めるのには成功した。



別方向からのアプローチ――いわゆる援軍による不意打ちの可能性である。



天使である皇はかつての処刑者軽里玖留里が体内に持つ“魂探知-コンサート-”のような、生存する大罪人らの位置を特定する方法は有していない。


しかしながら代わりに、自分の意志の有無にかかわらずオートで反応する脅威に対するアラートは健在である。


士との対戦の後遺症でいみじくもその感覚が失われたとややも危惧していたが、それは杞憂に終わる事となる。



【前方より脅威襲来】

【回避率:30% 致死率:4.2%】



(所詮張子の虎、か。見苦しい)


うっすらと微笑を浮かべ、そして若干の安堵を感じる皇。


危機察知能力は前と変わらず発揮されているのに加えて、注目すべきは回避率である。


勿論絶対的ではないとはいえ、しかし過去の経験上、



回避率が50%以下の場合は概ね 相 手 の 攻 撃 を 受 け る 前 に 事 を 終 わ ら す に 易 い 可能性が高い。



加えて致死率も10%以下、相手は決定的な武力を有していないという疑惑は確信へと変わっていた。


不確定要素はゼロではないにせよ攻めに転ずる理由が、皇に生まれた瞬間だった。



「なら試してみるかい? こちとら時間稼ぎをしているほど暇」


こちとら時間稼ぎをしているほど暇じゃあないんよ、そう言い終わる前に沙羅は地面へと倒れ込んだ。



フォンッ……という微細音と共に足元に現れたマンホール程の直径を持つ光柱が天へと向かって伸び、その軌跡にあった沙羅の右半身を瞬時に焼失させたからである。



「はっ、ははははっ……! あはははははははっ!!」


「勿体ぶりやがって、馬鹿が! 馬鹿が! 馬鹿以下のカスゴミめがッ!!」



沙羅が知り得る筈が無いというか、認識が誤っていただけなのだが、皇の“福音光線-リオンレイ-”。


通常より多く体力を消費する制約が発生する分、実のところそれは掌以外からも発射が可能である。


さながら自由に設置できる地雷が如く、目に見える範囲であれば、何処からでも――掌から発射する何倍もの威力を誇る一撃を見舞うことが出来る。


この時点で、皇は己の勝利を確信していた。


大量の血液なり臓物なりを地面にぶち撒けた人間が、立ち上げれる筈など無いだろうと、これで治癒に専念できるだろうという確信が、あった。



しかしそれは確信ではなく過信であって――言い換えれば慢心ともとれるような一時の愉悦に過ぎなかった。



「よっ……と。ふん。死ぬほど痛かったが、頭を落とされなくてラッキーだったぜ」



見開かれた目を閉じて哄笑する皇に、今や聞こえる筈の無い声が聞こえてくる。


「……お前?」


「“……お前?”じゃねぇよボンクラ。てめぇの頭脳はマヌケか? あぁ、そういや言ってなかったっけか」



実はまだ反魂玉残ってたんだよねぇ、と。



先程の負傷痕が綺麗さっぱり消え失せて――いたって無傷な健全なる肉体を取り戻した沙羅は、意地悪そうに笑う。


「つってももういっこも残ってねぇがな。あ、これはマジの話だから。もうストックは無ぇよ? とはいえ……」


呼吸を整えて、その場で軽く飛び跳ねながら、沙羅はゆっくりと構え始める。



「今からてめぇの玉をブチ壊して、仕舞いだ。嫌なら死ぬ気で私を殺してみろ」


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ここまでは首尾よく事は運べていると、沙羅は思った。


というかここからが本番で――ブラフでは無く反魂玉を3つとも失ってしまっているのだから、もう捨て身以外の策を練る必要がある。


目下のところ大筋の策自体は進行中であったとしても、だ。


敢えて相手の殺人光線を致死量分受ける事により、対冥奈戦での負傷ダメージは全快まで癒えている。


対価として支払ったペナルティによって失われた三感を差し引いたとしても、全快した己の体躯でもってすれば、充分に戦える。


戦わなければ、ならない。


構えを取って不敵な表情を浮かべてはいるものの、それでいて内心彼女は不安で仕方が無かった。


もしも自分の目論見が相手に露見する、ないしは少しの違和感を覚えられるだけでも、勝ちからは遠ざかってしまうが故に。



完膚無きにしてまで勝利する。


相討ち(ドロー)――いわゆる引き分けでは駄目なのだ。



それが今の沙羅の掲げる最大目標であった。


(だけども無傷、って訳にはいかないよな)


対する追跡者の主要武力である、殺人光線――ビーム砲は、基本的に防御するという概念が無く、躱す必要を余儀なくされる。


重火器であれば盾か何かで受ける手段があるにもかかわらず、出鱈目な火力を誇るそれには遮蔽物が本来の意味を為さないからだ。


そしてつい先程判明した事実として“座標を設定したうえで発射”が可能な点からも、回避難易度は格段に上がったかのように思えた。


沙羅が皇に対して持ちうるアドバンテージとしては、相手は動けず・自分は動ける点である。


光線の初動がほぼ無いに等しいとはいえ、ある程度の読みを持って命中しないように取り計らわなければならない。


見誤っては、ならないのだ。


皇に背中を見せない様、半身を切らずにともすれば棒立ちの様な構えにて、沙羅は未だ動かない。


ともすれば行動を起こす前に皇の光線が何処からか発射され、その身を焼き焦がす可能性が無きにしも非ずだとしても、軽率には動かない。



相手が狙っているのはいわゆる“後の先”だという、確信が沙羅にはあったのだから。



【ピーピングボム】によって、皇が撃てる光線は残り僅か一発だという事実を、沙羅は既に把握している。


ラスト1――外せば文字通り後が無い状況で、今まで通りに乱射する確率は極めて低いとの、予想である。


そんな沙羅の予測はそのまま皇の内心と一致していた。


(何を企んでいるのかは分かりませんが……絶対に私には届かない)


これは皇の驕りでは無く、過去潜って来た死線から学んだ、揺るぎない自信である。



確 実 に 相 手 を 屠 れ る で あ ろ う 斯様(かよう)な自信が、あった。



重ねてにはなるが、皇に一切の油断は無かった。


しかし先んじて彼が虚を突かれたのも事実であり――まず、先に沙羅が動いた。


「ッ――!!」


膝を折りその場に崩れ落ちる様に身を沈めた沙羅は、しかし倒れ込む寸での所で地面を蹴り、滑る様にしながら怒涛の勢いで皇へと駆け出した。


人間が動く際に生じる初期動作を脱力することによって極力抑止しての、電光石火の速攻であった。


(さぁて。てめぇはどう対処する……?)


皇を直接叩ける距離に到達するまで、時間に直して凡そ3秒弱。


沙羅が攻撃の制空圏に到達する前に光線が射出される可能性を、敢えて彼女は度外視した上で最高速度(トップスピード)にて間隔を詰める。


(まるで炎に寄って炙られる蛾の如き愚行――)


彼女の思惑通り、皇は未だ行動に移らない――いや……動く必要が無いとも言えた。


危機察知の警報が現時点で働いていない。


それは皇の視点からすれば、



沙 羅 は 本 気 で 攻 め る 意 思 を 有 し て い な い 裏 付 け と な る  。



(回避に徹しての暴発狙い……ですか)


(小癪を通り越して哀れに感じますね。お望み通り消炭にしてあげましょう……!)


迎撃の体勢を崩さない皇に対し、残す所約3メートルにまで迫った際、沙羅は速度を削がないままに宙へと飛び上がった。


ボールがバウンドするようなしなやかな動きは、間もなくして皇へと到達するであろう。


地に足付いていない、空中である。



(――――来なッ!)


(死ねッ――――!)



両者共にこのタイミングしかないという意識が合致した、一瞬触発の瀬戸際であった。


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四肢をはじめとした肉体より直接射出される“福音光線-リオンレイ-”の亜種とも言える、設置型攻法――“自在光柱-テンタクルピラー-”。


先程沙羅の半身を焼失させたこれは、なにも攻撃範囲を円状に限ったものでは、無い。


限られた面積内ならば、発射する型を自由に変化することが可能であった。


沙羅が跳躍したとほぼ同時に、眼前に横一線広範な壁面を模した光線を、皇は地面より射出する。



(ッ!! ……ここだッ!)



触れればその身を骨すら残さずに焼失させる殺人光線、眼前に面として出現したその壁に激突するかと思いきや、沙羅は前方に向かっていく重心を 力 任 せ に 引 っ こ 抜 く 様に、鮮やかな宙返りへと移行する。


前髪を一部掠るぐらいのギリギリの所で、“自在光柱-テンタクルピラー-”との接触を回避。


そしてバリアーさながらの壁が消えた時には――皇の前方より沙羅の姿は無くなっていた。


呆気なさすぎるという感想を抱くとほぼ同時に、ここで皇の危機察知感覚が反応する。



【右方向より脅威襲来】

【回避率:49% 致死率:99.9%】



(自由の利かない空中での回避に次いで、死角からの強襲……)


(見事――――な訳がないでしょうッ!)


頸部を90度右にずらしながら、皇は口を大きく開き、咆哮と同時に“福音光線-リオンレイ-”を放った。


負傷した身体治癒に回していた力を光線射出のエネルギーに変換する、奥の手よりも更に奥の手である。


横薙ぎ一線の殺人光線が、目前に迫る頭部を見事二等分に分割する。


命中後の刹那、今度こそ皇は己の勝利を信じてやまなかった。


仮に反魂玉を持った相手が同様の状況だとしても、頭部(脳髄)が身体から離れれば、修復の手立てはもはや無い。


既に沙羅には反魂玉が残されていなかったとはいえ、前述に則せばそれで終わりだったのであろう。



しかし、皇は気が付かなかった。



スライスした頭部が 冥 奈 の 生 首 で あ る こ と に 気が付けなかった。



彼にとって人間とは、普段の言動や思想からして、取るに足らない下等な生物という認識である。


それは同種の動物を複数体並べた際に一見して個々の違いを見抜くのが困難である人間の感性と一部近しいものがあった。


ぱっと見では、分からない。


故に皇は、性別の違いこそかろうじて判別できるも、



沙 羅 と 冥 奈 の 区 別 が 瞬 時 に 付 か な か っ た 。



「ハズレだバカタレ。おい、こっちを見ろ」


「ッ!?――――――ガァアッ!!!」



勝負が決したと思ったや否や逆方向である左側から、殺害した筈の大罪人の声が聞こえてくる。


反射的に皇は振り返ざるをえなかった。


そして開かれたままの口蓋へと、全体重を乗せた沙羅のナックルブローが叩き込まれる。


端正に生え揃った歯をめしめしと折りながら、喉の奥の食道をも貫通して、一気に臓部へと到達した沙羅の拳は、臓物に埋め込まれた戟墜玉に当たったという、確かな感触があった。



「はい私の勝ち~。いやさ、危なかったけど、なんとかなるもんだねぇ」


「な……なぜ……な……ぐッ……ぅぅう……」



体液や血液で濡れた右腕を引き抜いた後、それを軽く振りながら気怠そうに勝利を宣言する沙羅。


致命的なダメージ負い大量の疑問符が頭を過(よぎ)りながらもそれでも現状を把握出来ない皇。



どうして奴は“自在光柱-テンタクルピラー-”射出のタイミングを把握していた?


どうしてその後に続く右方向から飛び出してきた生首に危機察知感覚が反応した?


どうしてその後の沙羅の攻撃に対して危機察知感覚は反応しなかった?



戟墜玉の破損により間もなく、己が死が確定的に訪れる最中にあるとはいえ、皇の疑問は尽きる事が無い。


そもそも、思い返せば初撃で沙羅を仕留められなかった時より、何らかの違和感があった。



設置型の“自在光柱-テンタクルピラー-”は最大5平方メートルの面積の光線を射出出来るというのに、自分は 敢 え て 相手の身体を半分残す事によって、反魂玉による全快を施してしまったのではないだろうか、と。


それもその筈である。


重体のまま姿を現し、皇へと声掛けを行った時点より、沙羅の固有能力は既に発動していたのだから。



固有能力【ピーピングボム】改め、レベル2【ビーイングラヴ】。



他者の思考を盗聴する従来の能力は、



術 者 の 思 考 を 他 者 へ 同 調 さ せ る 能 力 へ と 進 化 し て い た 。



一時的な洗脳――あるいは限定的な思考操作能力である。


先の冥奈戦の最中に開花したこの能力にて沙羅は見事彼女を撃退し、意趣返しと言わんばかりに斬首した頭部を服の内側に隠し持った状態にて皇へと挑んだ。


初撃の自在光柱-テンタクルピラー-”は勿論の事、皇の有する危機察知感覚の誤作動までをも沙羅の思考を同調させることにより誘発した結果、一撃を入れる事に成功したのであった。



戟墜玉の破損による致命的なダメージを負った皇の身体は、ボロボロと塵化していく。


自己よりも遥かに格下だと思っていた、取るに足らない下等生物に敗れ去るという屈辱。


悔恨を通り越した憤怒、筆舌に尽くしがたい屈辱、そして劣等感。


そのような負の感情が渦巻きながら死へと突き進む皇は、最期の悪足掻きを沙羅へと見舞った。



崩れゆく胴体より四方八方へと殺人光線を発射し、幾閃かの軌跡が彼女を貫いて――――


―|―|―|―|―|―|―|―|―|―|―|―|―|―|―|―|―|―|―

「!!!」


「……あ~。マジか、やっちゃう? そゆこと」


「はぁー。あーあーあー……しくったなぁ。最後の最終で、気ぃ抜いちゃったなぁ……」


「凡ミス、非常に凡ミス」


「凡ミスだけに覆水盆に返らず――なんて、私のキャラじゃないか」


「うわぁー。めっちゃ血ぃ出てるし。痛い通り越して熱いな、これ」


「なんだろうなぁ。なんなんだろうなぁー、もう。もうもうもう!」


「つーか寒い。あとなんか眠い、非常に眠い」


「門が開くまでの時間は――っと、あと10分くらいか……」


「それまでもつかなぁ。ん~~~~、無理っぽいかなぁ」


「はぁー……ま、それならそれまでで、いっか」


「うん。よし、それじゃ、まぁ――」


「おやすみなさい」



誰もいない、誰も聞いていない独白の後。


皇の死に際に放った“福音光線-リオンレイ-”によって尋常ならざる負傷を被った沙羅は。


眠るようにして――その目を閉じた。